#エッセイ
ウクレレがそっとたたく、小さな未来の扉
ウクレレに触れるのは、おそらく六十年振りだ。 孫の男の子の誕生日プレゼントとして、密かに準備している。 通販で購入したウクレレは七千円ほど。 作った人に申し訳ないくらい安いが、おもちゃではなく、大人が普通に使える本物 … 続きを読む
三時に起きた、ひとときの恋人
誰にとっても孫ほど可愛い存在はないだろう。 男の子も女の子もそれぞれ違った特徴と「味わい」があり、甲乙つけがたい。 しかし、じ~じにとっては孫娘が特別の存在であることは、議論の余地がない。 まさに世界一の可愛い恋人な … 続きを読む
QRコードのアクエリアス
科学技術の最前線を走ってきたつもりが、気づけば世界は静かに先へ進んでいた。 孫娘のアクエリアス一つ買うのに、昭和の男はまたしても令和の仕組みに驚かされた。 語れば笑われるかもしれないが、これが正直なところである。 昨夜一 … 続きを読む
原子を並べて世界を創る時代
人類はこれまで、地球が偶然つくり出した物質に依存して文明を築いてきた。 木材、鉄鉱石、石油、レアメタル──いずれも自然が与えた一次産品であり、私たちはそれを加工して生活を成り立たせてきた。 しかし、それらは有限であり … 続きを読む
背中が物語る壮大な人生
昭和の美学は、いつも私を捉えて離さない。 語らない。 嘆かない。 叫ばない。 振り返らない。 それは強がりではなく、 生き抜いた者だけが持つ静かな矜持だ。 物語に、言葉はいらない。 物語に矜持を貫いた男は語ら … 続きを読む
坂道であることを受け入れる三十年
歳を取るにつれて身体は徐々に衰え、どこかに不具合が出てくる。 まわりを見ていると、還暦を過ぎたあたりからその傾向は一気に強まるようだ。 私の場合は、六十歳を過ぎた頃はまだ健康上の不都合も懸念もなかった。 現役そのも … 続きを読む
目を塞ぎ耳を覆いたくなるもの
テレビを見ていると、どうにもリモコンが手放させない。 頻繁にチャンネルを変えたくなるからだ。 変えた先から、またすぐ別のチャンネルに変えたくなることも多い。 放送局が悪いのではない。 放送内容を見聞きしたくない私の問題な … 続きを読む
流転する規格と、遺物化される目の前の価値
先日、大手家電量販店の大型店舗を訪れた。 そこには高級オーディオの取扱コーナーがあり、立派な視聴室まで完備されていた。 私は若い頃オーディオに凝っていて、かなり散財したものだ。 少し覗いただけで違和感を覚えたのは、展 … 続きを読む
通勤電車がつないだ、ふたつの世界のあいだで
先日、久しぶりに都心に出かけた。 池袋の東京芸術劇場で開催されるコンサートを聴きに行くためだ。 都心にはできれば行きたくないのだが、コンサートだけは仕方が無い。 私の住む埼玉県飯能市から池袋までは、かつて通勤で毎日乗って … 続きを読む
孫に気付かされた子供への愛
私は二十五歳で妻と知り合い、二十八歳で結婚し、娘が生まれたのは二十九歳、息子が生まれたのは三十歳だった。 外から見れば、万事順調に家庭生活が始まったように映っただろう。 だが実際には、すべてが絵に描いたように進んでいたわ … 続きを読む
人は何に心を奪われるのか
芸術の世界にあるものは、観る者の嗜好によってその評価が大きく左右される。 そしてよく観察すると、そもそもその対象に対する「着目点」そのものが、人によってまったく異なっていることに気づく。 例えば映画であれば、 「登場 … 続きを読む
朝の祈りが連れて来た人
今朝のゴミ拾い散歩は、家から二キロほど離れた立派な神社と、その近くにある立派な寺を参拝しながら歩くコースだった。 予定通り歩き、あとに十五分も歩けば家に着くという地点まで来たときのことだった。 屈みながらトングで、数 … 続きを読む
哲学をするとき・懺悔をするとき
誰しも、未知の世界へ足を踏み入れたとき、どう振る舞えばよいのか分からず戸惑うものだ。 無我夢中で生きてきた過去から突き放され、心に空洞が生まれている自分に気づく。 小さくてもいいから生きがいや目標を見つけなくてはと思うが … 続きを読む
スマホだから、電子劇薬中毒
今日も静かな畑に囲まれた裏道を歩いていると、後ろから歌や話し声のようなものが聞こえてきた。 すっと追い越していったのは、背中にリュックサックを背負った男性が乗る自転車だった。 追い越されざまに後ろ姿の顔を見たが、首元まで … 続きを読む
生命のリレーのために、華やかに着飾るとき
春になるとそこら中に色とりどりの花が咲き乱れる。 梅やモクレンから春は始まり、家々の庭先にはスイセン、ヒヤシンス、フリージア、パンジーが姿を見せる。 春本番となると、桃や桜が咲き乱れる。 桜が散り、八重桜が重たげに花 … 続きを読む
声という生命の音 ― 人間の声はなぜ楽器を超えるのか
オペラ歌手の歌を聴くと、どうしてあのような素晴らしい声が出せるのだろうと、心から感心してしまう。 私はクラシック音楽のオーケストラを聴くとき、耳で聴くだけでなく、演奏者ひとりひとりの動きを食い入るように観察する。 楽器の … 続きを読む
焙煎という旅路 ― コーヒーと私の小さな工房から
朝の寝起きの一杯や、家でくつろいでいるときに飲む一杯のコーヒーは、体の隅々に血を巡らせてくれる。 本当に不思議な飲み物だ。 調べてみると、コーヒーの起源は年以上も昔、エチオピアで発見された赤い実の「覚醒作用」にあり、その … 続きを読む
春の朝、鳥たちの合唱に立ち止まる
朝早く、散歩にでかけようと家の前に立った。 まだ人々の一日の営みが始まる前の澄みきった静けさの中に、ひときわ明るく爽やかな鳥の声が響き渡っていた。 まるで人間がお喋りをしているかのように、絶え間なく華やかに啼き続ける鳥 … 続きを読む
哲学と仏道の静かな旅
映画や小説では、歳を重ねたり人生の大きな壁に直面した人が「仏門に入る」と語る場面をよく目にする。 世俗を離れ、仏の弟子として生きるという意味だが、必ずしも出家して僧侶になったり、寺で厳しい修業を積んだりすることだけを指す … 続きを読む
涎が垂れる昭和レトロ
『男はつらいよ』を観ていて、涎が垂れそうになる場面がふたつある。 ひとつは、タコ社長やおいちゃんが実にうまそうに吸うたばこだ。 私はもう何年も前に禁煙し、普段はそのことをすっかり忘れているのに、人が美味しそうに吸っている … 続きを読む
一枚を撮るということ
スマホが広まった今では、誰もが写真を簡単に撮影し、溢れるほどの数の写真をメモリーやネット空間に保存している。 もはや一度に全部を見ることなど到底できない。 撮る側は、枚数などまったく気にしない。 子どもにスマホを渡して、 … 続きを読む
昭和レトロが語るアナログの価値
何と言っても『男はつらいよ』に出てくるシーンは、すべて昭和レトロそのものだ。 あの映画をみて懐かしさを覚えるのは、昭和を生きてきた世代だろう。 しかし近年の昭和レトロ・ブームを眺めていると、その懐かしさが昭和を知らない世 … 続きを読む
決して軽んじてはならない ― ウィルス対策ソフトの仕事
パソコン人間になって五十年。 一時は十台近いパソコンを同時に稼働させていたこともある。 そんなハードユーザーの私が、これまでウィルス被害に遭わずに済んできたのは、運が良かったか、あるいは常に使ってきたウィルス対策ソフトの … 続きを読む
深掘り『男はつらいよ』 ― 寅さん映画の神髄とは
1.はじめに 主に昭和の時代に制作されたこの映画は、過去のものとなりつつあり、昭和生まれの私には慣れ親しんできた物語であっても、今の若い人たちには馴染みが薄いだろう。 今の時代は不寛容であり、人間関係は希薄化 … 続きを読む
間違えたり、しらばっくれたり、しらを切ったり
最近の私は、AIのハードユーザーと化している。 Webサイト作りのプログラム開発はもちろん、ありとあらゆる場でAIを活用している。 先日GeminiとCopilotに二股をかけることによって、はじめてプログラミングが … 続きを読む
縦書きか横書きか ― 日本語の悩み
「手書きの温もり」という表現は、手紙において最も説得力をもつように思う。 私の銀行勤め時代の後輩は、昔から時々、封書で手紙を送ってくれる。 しかも和紙の縦書き便箋を使っている。 最近になってパソコン印刷になったが、手書き … 続きを読む