余白に書き加える物語

自分に立ち向かって過去の悪行を振り返り、自分自身に決着をつけるために毎日エッセイを書き始めて、もう半年近くになる。 それは自分の内側に積もった沈殿物を少しずつすくい上げ、光に当てていくような作業だ。 おかげで、今まで見え … 続きを読む

最高のパートナーとの出逢い

絶対に戻ることができない、一方通行の道があり、その道の両側にはさまざまな果物の木が生えている。 実をつけた木もたくさんある。 その道では、木になっている果実をひとつだけ採って食べてよいことになっている。 ひとつだけだ。 … 続きを読む

幸せは比較ではなく、それぞれの人生の物語の中に生まれる

就職して初めて配属された職場で、隣の課の上司がこんなことを言った。 「他人の幸せは自分の不幸、他人の不幸は自分の幸せだよ」 当時は「なんと大胆なことを言うのだろう」と驚いたが、年月を重ねるうちに、その言葉の半分には確かに … 続きを読む

木の枝に残された巣のように

小さな虫から始まって、多くの動物は「巣」と呼ばれる棲み家をつくる。 それは繁殖のための場所であり、命をつなぐための最小単位の世界だ。 牛や馬、猿のように定住しない動物でさえ、与えられた寝床を心地よさそうに使う。 生き物に … 続きを読む

自分の儀式を生きる

私はとにかく「儀式」が嫌いだ。 若い頃はそれほどでもなかったが、徹底的に嫌悪の対象へと変わったのは自分の結婚式がきっかけだった。   都内の式場で、そこそこ立派な結婚式だった。 しかし普段は堂々として押しが強く、物おじし … 続きを読む

神仏の境界で聞こえる心の声

私の家の近隣には、歩いて行ける範囲に、散歩のついでに週に一度は手を合わせに立ち寄る神社が七か所、寺が二か所、地蔵尊が二か所ある。 最近になって、あることに気がついた。 寺や地蔵尊の前にも賽銭箱や鈴があるのだ。 以前から賽 … 続きを読む

答えのない問いとともに

全力疾走で走り抜けてきた時代が終わると、人は不思議と染みったれたことを考えるようになる。 柄にもなく立ち止まり、「生きるとは何か」などと理屈っぽい問いに向き合ってしまう。 同じ歳、あるいはもっと年上の人が、理屈などこねず … 続きを読む

「無常」は人生を撫でる風のように

私は歴史や文学は苦手科目であったのに、なぜか「平家物語」の冒頭の全文だけは忘れられず、今でもそらんじている。    「祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり。 娑羅双樹の花の色、盛者必衰の理をあらわす。 おごれる人も久しか … 続きを読む

馬車馬は、止まり方を知らない

「時間がない」。 私は昔から、いつもそう感じながら生きてきた。 遊ぶ時間さえなかった。 「時間がない」とは、時間が足りないということだ。 時間が足りないということは、やり残しがあるということだ。   だから私は、いつも一 … 続きを読む

自分にしか残せないもの ― 私の人生をつくった、ただ一つの原理

大河ドラマ「豊臣兄弟!」を観ていたら、秀吉の母が秀吉の弟である秀長に「自分にしかできない事をやりなさい」と言って兄秀吉の右腕となるようにハッパを掛けるシーンがあった。   私は「いいことを言うなぁ」と思うと同時に「自分に … 続きを読む

趣味という語は、私の人生の重さに耐えられない

私は「趣味」ということばに、どこか抵抗を感じている。 本来やるべきものから外れた「生産性のない娯楽」という響きがあり、どうにも馴染めない。   「世の中でどのように定義されているのか」と思い、ネット検索や辞書、各種AIで … 続きを読む

「残そうとして歩いた時間」そのものが私の人生

人はいつか死に、そしていつか忘れ去られる。 それでも私は、この世に何かしらの「形」を残したいと思っている。 それは名誉でも評価でもなく、ただ「生きていた」という微かな痕跡のようなものだ。   形とは、必ずしも目に見えて重 … 続きを読む

「後悔しないで済んだと言いきれますか?」

私が大好きでたまらない映画『男はつらいよ』第17作に出てくる場面の一つだ。 自分の故郷である兵庫県たつの市を訪れた、宇野重吉さん演じる池ノ内青観という老画伯が、若い頃に縁のあった岡田嘉子さん演じるお志津さんと再会するシー … 続きを読む

一声かける勇気

日本人の文化にはある種の閉鎖的な側面がある。 特に、周囲の人とのちょっとした関わり方にそれが表れる。   毎朝、夫婦で散歩をしている。 左手にはレジ袋、右手にはトング。 一目でゴミ拾いをしているとわかる格好だ。 始めたば … 続きを読む

「心のアルバム」に浮かぶ一番好きな姿

久しぶりのかつての同僚に年賀状を出したら、返事のはがきが送られてきた。 珍しい名字なので、ちらりと見ただけで彼からだと分かった。 しかしよく見ると名字に続けて書いてある名前が違い、しかも女性の名前だった。 ドキッとしては … 続きを読む

性癖がつくる人生 ― 選択の源にあるもの

過去を振り返り、「あの時あんなことをしなかったら、その後の人生は変わったものになっていたに違いない。」と思う事はないだろうか。 しかし、もしあの時の選択をやり直せたとしたら、人生は本当に変わっていただろうか。   人生が … 続きを読む

スマホが目覚めさせた、眠れるフォトグラファーたち

スマートフォンの先駆けであるiPhoneが登場したのは2007年だった。 それから十数年、早くも2010年代の後半にはスマホは当たり前の存在になっていた。 今では世界人口の80%以上が所有しているという統計もある。 世界 … 続きを読む

急ぐ夜明けの向こうへ

学生時代の若かった頃、夜遊びに胸をときめかせた。 周りの大人たちが一日の役目を終えて家路についたり、夜の街で笑って過ごしていたり、家でくつろいでいたりする。 昼間の緊張感がすっと消えた後に訪れる夜の世界は、学生の自分たち … 続きを読む

もう走れない身体で、まだ走りたい心で ― 今だから見える景色

上り坂を、リュックサックを背負った若者が軽やかに駆け上がっていった。 「ホッ、ホッ、ホッ、ホッ」と気持ちよさそうに、まるで箱根駅伝の往路を走る選手のように、一定のリズムで身体を前へと運んでいく。 私を追い越してだんだん小 … 続きを読む

こころの創作にAIを使ってはならない

ちまたで広く使われてAIが出来る事にすべて頼ってしまっていいのだろうか。 少なからず半信半疑の気持ちでいる人は多いのではないかと思う。   私は当初AIなるものを毛嫌いして、ブツブツ言いながらいじくりまわしていた。 その … 続きを読む

標準語という私の「方言」

標準語とは、いったいどういう存在なのだろうか。   南風に乗る優しい声 ― 九州  私は東京で育ち、自然と標準語を身につけてきた。 父は大分、母は博多の出身で、家の中にはいつも九州の言葉が飛び交っていた。 とはいえ、外で … 続きを読む

憧れのあの国は何処へ ― 崩れゆく理想と私の記憶

今朝のニュースを知った瞬間、胸の奥がざわついた。 こんな感覚に襲われたのは、生まれて初めてかもしれない。   過去一年にわたり世界を騒がせてきた、かつて民主主義世界の盟主と呼ばれたあの国の大統領が、デンマーク領グリーンラ … 続きを読む

「と思っていてぇ〜」という時代

最近、街中やテレビで耳にする言葉遣いの中に、どうにも気になる表現がある。「〜と思っていてぇ〜」という、語尾を伸ばしながら自分の意見を“途中経過”のように提示する話し方だ。 本来なら「○○と思っている。そして△△だ」と二つ … 続きを読む

見えていなかった恵み

人から「あなたは恵まれているのか」と問われれば、私はおそらく余計な贅沢は言わず、謙虚に「恵まれている」と答えるだろう。 それは、多くの人が「上流か下流か」と聞かれたとき、「中流です」と答えるのに似ている。 しかし実際の私 … 続きを読む

憧れは夢になり、燃えカスだけが残った

人は誰でも、心のどこかに憧れを抱いて生きている。 自分の手の届かない場所にある何かが、ひときわ輝いて見える瞬間がある。 それは人であったり、物であったり、環境であったりする。 憧れとは、遠さゆえに美しく、淡さゆえに強い感 … 続きを読む

技術の世界を生きた者が、言葉の小径を歩き出す

毎日noteでのエッセイ執筆に熱中して来たおかげで、TVを観ていても出演者の言葉の慣用的誤用、文法上の間違いが凄く気になる様になってしまった。 毎朝ゴミ拾いをしていると、ほかの用事で道路を歩いている時でも、車に乗って走っ … 続きを読む

絶海の孤島 ― 銀河が降り注ぐ日本の楽園

私が訪れた国内外で、いつも私が心を惹かれた場所は「島」だった。   人生で最初に訪れた島は伊豆七島の八丈島だった。 東京竹芝桟橋を夜中発の東海汽船に揺られて翌朝10時ころ到着した。 道中海は大荒れで船酔いで気持ち悪くなり … 続きを読む

心に染みる神のまなざし、仏の教え

海外に旅行すると、教会や大聖堂、モスクや寺院と言った各国の文化を形成する宗教ごとに礼拝を行う場があり、そこには多くの国民が日常的に訪れてお祈りをしている。 それに較べて今の日本人は、日常生活で神仏への信仰に関わる事は極め … 続きを読む