生き方
熱く燃えた季節、灰に残る微熱
私がスペインで「人生を謳歌する」というラテン世界の生き方を学んで帰国した1985年の冬、小林旭の『熱き心に』がリリースされた。 旅先の四季折々の姿に、熱い想いを寄せたまま別れた女をなつかしく想い焦がれる気持ちを重ねて … 続きを読む
欲望の美学:利己主義に収斂する世界
世界はいま、国家レベルでの利己主義化という構造変化のただ中にある。 米国は従来の国際秩序の維持役を放棄し、右傾化と排外主義を強め、国境に壁を築き、移民の流入をかつてないほど拒絶している。かつて「自由と寛容」の象徴であった … 続きを読む
秘密のヴェール ―― 沈黙の輪郭
沈黙を形づくるもの 私の過去には、声を上げて語ることをためらう出来事が少なくない。 言えない話と、言わない方がよい話、そして言いたくない話。 それらは形を変えながら私の沈黙をつくり、今の私という人間の輪郭の一部を形づ … 続きを読む
起きていたい ―― 目覚めている事が私の生きている証し
私はとにかく起きていたい。 眠っている時間が、どうにも好きになれない。 寝入る瞬間だけは幸せだ。枕に吸い込まれて行くような、あの短い沈み込み。しかし一度眠りに落ちてしまえば、もう起きることしか考えなくなる。 夜中に目 … 続きを読む
赦しのための、人生の最終章
「人間は何のために生きるのか」という問いほど、繰り返されてきた哲学的疑問は他にないだろう。 私の大好きな『男はつらいよ』で、高校三年生の満男が寅さんに同じ質問をする場面がある。原作者・山田洋次の哲学は、「ああ、生まれてき … 続きを読む
偉人とは何か:人生の軸を問い直す
人生で一生かけて何を目指すべきだったのか。自分は何を目指して生きてきたのか。そして、その結果としてどのような足跡を残せたのか。それは成功だったのか、失敗だったのか。 これらは、人間にとって極めて重要な問である。しかし、同 … 続きを読む
この時代に生まれたということ
歴史を遡っていくと、生きていた人たちが悲惨な目にあった時期はいくらでもあった。戦時中に青年期を迎え、徴兵されて無念にも散っていった話は枚挙にいとまがなく、封建時代には国民の大多数が理不尽な貧困生活を強いられたであろう。 … 続きを読む
老兵は死なず、ただ消え去るのみ
アメリカ陸軍のマッカーサー元帥の有名な退任演説の一節である。 「Old soldiers never die; they just fade away.」 とてもいい言葉だ。 老兵は死んで消え去るのではなく、時のどこかに … 続きを読む
人間は善でも悪でもなく「利己性と共感性の二重構造」で生まれる
性善説と性悪説 人間の本性をめぐる古典的な議論には、「人は生まれながらにして善性を持っている」という性善説と、「人は生まれながらにして利己的である」とする性悪説がある。 性善説は、「もともと人間は善なのに、善が失われ … 続きを読む
期待し過ぎた私が悪かった ―― 偶像が剥がれ落ちるとき
アメリカに私が勝手に抱いた「偶像」 青春期の私は、アメリカという国に強い憧れを抱いていた。 私はアメリカを「自由と正義の純粋な体現者」として捉えていた。 自由、開拓精神、民主主義 ―― それらは私にとって眩しく、未来 … 続きを読む
最後に残された私が、今日も問い続けていること
今日、数年ぶりに甥が我が家を訪れた。ちょっとした用事で立ち寄ることになったのだが、久しぶりに会った彼は、すっかり中堅社員らしい落ち着きを身につけた大人になっていた。その姿を見て、私はふと、自分の家族のことを思い返すことに … 続きを読む
日本には人生がないと言われた日、情がないと言われた日
私の人生には、忘れられない二つの言葉がある。 スペインで言われた「日本には人生がない」。 韓国で言われた「日本人には情(じょう)がない」。 どちらも、私の内側の空洞に鋭く突き刺さった。 自分では気づいていなかった「日 … 続きを読む
支配欲の呪縛 ―― 思想・歴史・資本・感情のハッキング
人間社会は、様々な支配構造に翻弄されている。 現存する特定の社会システムを批判することは容易だが、翻って「理想の社会」など地球上のどこを探しても存在しない。 歴史を見渡せば、民主主義的で平和な社会が一時的に成立することは … 続きを読む
私が青年に託したもの
私がかつてタイムラプス撮影の個人事業を行っていたとき、「長期タイムラプス遠隔撮影システム」を開発した。 その撮影装置と技術を引き継ぎたいと、はるばる遠方の地方都市から四十歳年下の青年が訪ねてきた。 彼は映像制作会社の社長 … 続きを読む
誰にも語らない「誇り」の強さ
人生で、自分が何を誇りに思うかなどどうでもよく、楽しく生きられればそれでいい、と考える人もいるだろう。 しかし、誇りとは、自分の人生を肯定するための大切な支えではないだろうか。 誇りとは何か 人には人の数だけ生き方が … 続きを読む
憎しみも、一期一会の一幕
憎しみは永遠に続くものなのだろうか。 人は必ず死を迎える。 それでもなお、憎しみだけは死を越えて残り続けるのだろうか。 どうしても相いれない相手がいたとして、いつも腹に据えかねていたとして、意見が合わないばかりか事あ … 続きを読む
背中が物語る壮大な人生
昭和の美学は、いつも私を捉えて離さない。 語らない。 嘆かない。 叫ばない。 振り返らない。 それは強がりではなく、 生き抜いた者だけが持つ静かな矜持だ。 物語に、言葉はいらない。 物語に矜持を貫いた男は語ら … 続きを読む
生命のリレーのために、華やかに着飾るとき
春になるとそこら中に色とりどりの花が咲き乱れる。 梅やモクレンから春は始まり、家々の庭先にはスイセン、ヒヤシンス、フリージア、パンジーが姿を見せる。 春本番となると、桃や桜が咲き乱れる。 桜が散り、八重桜が重たげに花 … 続きを読む
哲学と仏道の静かな旅
映画や小説では、歳を重ねたり人生の大きな壁に直面した人が「仏門に入る」と語る場面をよく目にする。 世俗を離れ、仏の弟子として生きるという意味だが、必ずしも出家して僧侶になったり、寺で厳しい修業を積んだりすることだけを指す … 続きを読む
その人にしか創れないもの
思い出す限り、私が人生で最初に「創作らしき体験」をしたのは、小学五、六年生の頃だった。 通っていた小学校の校門のすぐ脇には大きなヒマヤラ杉が立っており、私はそれを絵の具でスケッチした。 なぜかその絵がどんなものであったか … 続きを読む
「懐かしさの原風景」
テレビや映画を観たり、人の話を聞いたりして「ああ、懐かしいなぁ」と思うことがよくある。 ふと思ったのだが、懐かしさの原点は人によってさまざまなのではないか。 幼少期、小学校に通っていた頃、元気いっぱいの高校時代、大学で過 … 続きを読む