分断する世界と暴走する技術
人類は常に変革の中を生きてきた。 しかし、昭和の価値観で育った私には、目の前を通り過ぎている変化を、穏やかな気持ちで見届けるのは難しくなっている。 技術と社会の進歩が、かつてなかった規模と速度で私たちを吞み込んで … 続きを読む
誰にも語らない「誇り」の強さ
人生で、自分が何を誇りに思うかなどどうでもよく、楽しく生きられればそれでいい、と考える人もいるだろう。 しかし、誇りとは、自分の人生を肯定するための大切な支えではないだろうか。 誇りとは何か 人には人の数だけ生き方が … 続きを読む
言葉が世界を変えるとき
外国語とは、忘れたと思っていた記憶を一瞬で蘇らせる、不思議な鍵のようなものだ。 その鍵が開くのは、かつて自分が夢中で生きていた時間であり、そこで出会った人々の声であり、あの頃の自分自身である。 外国語を学ぶ事の素晴ら … 続きを読む
酒が語る未知との出会い
私は若い頃から酒に強かった。どれだけ飲んでも翌朝にはケロリとしている体質で、二日酔いの記憶がほとんどない。 そのおかげで、酒という酒をためらいなく試してきた。 銘柄や種類にこだわる「酒通」ではないが、人生のあらゆる場面で … 続きを読む
長いものに巻かれないというアイデンティティ
道ですれ違った若い男性を見て、私は思わずはっとした。 懐かしいベレー帽をかぶっていたからである。 ベレー帽は昭和時代に強い存在感を示したファッションで、手塚治虫や富士子不二雄といった漫画家の象徴的なアイテムでもあった … 続きを読む
七千円の貸しと泡の謎
週に一回、妻と大型スーパーへ食料品の買い物に行く。 支払いは現金のみの店だ。 私の楽しみである晩酌の酒代とつまみ代は、家計費からではなく、私の小遣いから払うことにしている。 昔と違って、趣味に浴びるほど金をつぎ込むこ … 続きを読む
最期のかたちを探して
人は誰しも最期を迎える。 だが、その話は必ずしも暗いものではない。 どれほど元気であっても、やがて訪れるその時を、私は静かに見つめている。 私の父は大動脈瘤の手術を受けたが、施術に不手際があり、ICUで二カ月半を … 続きを読む
神は怒り、仏は静まる
日本では神社も寺も生活になじみが深い。 早朝の散歩コースは全部で八つ決めてあるが、どのコースを歩いてもどこかの神社か寺を通るように設定してある。 自分の気持ちとしては、それが神社であろうと、寺であろうとまったく差異はなく … 続きを読む
緑の大地と清流の地で
新緑が終わり、すべての生き物が夏へ向かって勢いを増す頃、野山は深みを増した緑に染まり、草木の香りが生暖かい風に乗って私を包む。 梅に始まった春の花の彩りは、いつの間にか幕を閉じ、気がつけば、家々の庭先では薔薇が誇らしげに … 続きを読む
日本が世界に誇る「道」の文化
最近、地元で開催された大相撲地方巡業を観に行く機会を得た。 相撲を観るのは初めてだったので、大いに楽しんできた。 目の前を横切る力士の肌があんなにすべすべして綺麗だとは思わなかったと感動したり、いつもテレビで見ている … 続きを読む
憎しみも、一期一会の一幕
憎しみは永遠に続くものなのだろうか。 人は必ず死を迎える。 それでもなお、憎しみだけは死を越えて残り続けるのだろうか。 どうしても相いれない相手がいたとして、いつも腹に据えかねていたとして、意見が合わないばかりか事あ … 続きを読む
ヒエラルキーの呪縛を超え、矜持を貫く
小説でも映画でもテレビのドキュメンタリー番組でも、描かれる「人生の優等生コース」は、一流企業に就職し、人より早く出世して、課長になり、部長になり、取締役になるというサクセス・ストーリーである。 出世の終着点は、常務、 … 続きを読む
ウクレレがそっとたたく、小さな未来の扉
ウクレレに触れるのは、おそらく六十年振りだ。 孫の男の子の誕生日プレゼントとして、密かに準備している。 通販で購入したウクレレは七千円ほど。 作った人に申し訳ないくらい安いが、おもちゃではなく、大人が普通に使える本物 … 続きを読む
三時に起きた、ひとときの恋人
誰にとっても孫ほど可愛い存在はないだろう。 男の子も女の子もそれぞれ違った特徴と「味わい」があり、甲乙つけがたい。 しかし、じ~じにとっては孫娘が特別の存在であることは、議論の余地がない。 まさに世界一の可愛い恋人な … 続きを読む
QRコードのアクエリアス
科学技術の最前線を走ってきたつもりが、気づけば世界は静かに先へ進んでいた。 孫娘のアクエリアス一つ買うのに、昭和の男はまたしても令和の仕組みに驚かされた。 語れば笑われるかもしれないが、これが正直なところである。 昨夜一 … 続きを読む
人生に描く、自分の美学
昔の映画を観ていると、懐かしい俳優のかつての姿を見ることができるが、次の瞬間、必ず頭をかすめるのが「この人まだ生きているのだろうか」という思いである。 映画『男はつらいよ』は、二十七年間、同じ俳優が同じ役を演じ続けた … 続きを読む
原子を並べて世界を創る時代
人類はこれまで、地球が偶然つくり出した物質に依存して文明を築いてきた。 木材、鉄鉱石、石油、レアメタル──いずれも自然が与えた一次産品であり、私たちはそれを加工して生活を成り立たせてきた。 しかし、それらは有限であり … 続きを読む
背中が物語る壮大な人生
昭和の美学は、いつも私を捉えて離さない。 語らない。 嘆かない。 叫ばない。 振り返らない。 それは強がりではなく、 生き抜いた者だけが持つ静かな矜持だ。 物語に、言葉はいらない。 物語に矜持を貫いた男は語ら … 続きを読む
坂道であることを受け入れる三十年
歳を取るにつれて身体は徐々に衰え、どこかに不具合が出てくる。 まわりを見ていると、還暦を過ぎたあたりからその傾向は一気に強まるようだ。 私の場合は、六十歳を過ぎた頃はまだ健康上の不都合も懸念もなかった。 現役そのも … 続きを読む
目を塞ぎ耳を覆いたくなるもの
テレビを見ていると、どうにもリモコンが手放させない。 頻繁にチャンネルを変えたくなるからだ。 変えた先から、またすぐ別のチャンネルに変えたくなることも多い。 放送局が悪いのではない。 放送内容を見聞きしたくない私の問題な … 続きを読む
流転する規格と、遺物化される目の前の価値
先日、大手家電量販店の大型店舗を訪れた。 そこには高級オーディオの取扱コーナーがあり、立派な視聴室まで完備されていた。 私は若い頃オーディオに凝っていて、かなり散財したものだ。 少し覗いただけで違和感を覚えたのは、展 … 続きを読む
通勤電車がつないだ、ふたつの世界のあいだで
先日、久しぶりに都心に出かけた。 池袋の東京芸術劇場で開催されるコンサートを聴きに行くためだ。 都心にはできれば行きたくないのだが、コンサートだけは仕方が無い。 私の住む埼玉県飯能市から池袋までは、かつて通勤で毎日乗って … 続きを読む
孫に気付かされた子供への愛
私は二十五歳で妻と知り合い、二十八歳で結婚し、娘が生まれたのは二十九歳、息子が生まれたのは三十歳だった。 外から見れば、万事順調に家庭生活が始まったように映っただろう。 だが実際には、すべてが絵に描いたように進んでいたわ … 続きを読む