想い出を閉じ込めるという生き方

私の部屋には、たくさんのアルバムとファイルが並んでいる。   アルバムはいわゆる写真アルバムで、全部で四十八冊。 それに加えて、新婚旅行や海外留学など大きなイベントは、別の十八冊の大型サイズのアルバムになっている。 また … 続きを読む

形式に映る自分の姿

世の中には形式を重んじる世界と、自由なスタイルを追い求める世界がある。 絵画や音楽など、いわゆる芸術の領域では、その違いがはっきりと表れる。 私は特に音楽が好きだが、好きなタイプは明確に分かれている。   私が好きなのは … 続きを読む

「愛し残した」という後悔と、「償いきれなかった」という後悔

  私は長いあいだ、死について深く考えることを避けて来た。 考えても答えが出ないことは、誰もが知るっているからだ。 しかし今、私は死について、これまで以上に真剣になって考え始めている。   世界中の誰もが一度ならず何度も … 続きを読む

最後の青色申告の先にあった爽快感

やっと終わった。 昨年の四月で事業を廃業したので、今回が最後の青色申告書となった。 簿記など習ったこともないのに手探りで始めた経理処理。 十数年間、「弥生の青色申告ソフト」を使い続けてきた。 日々の仕訳記帳を終え、年末の … 続きを読む

写真が守り、動画が揺るがすもの

映画やドラマ、ドキュメンタリー番組でも、一昔前の作品になると、登場する芸能人の多くがすでに他界していることに気づく。 あまりよく知らない人なら気にならないが、生前の記憶がたくさん残っている有名人の場合は、亡くなったと言う … 続きを読む

大空へのロマン ― 鳥たちとジェットストリームが育てた夢

私は山が近い川沿いの地方都市に住んでいるので、自然は身近にある。 昔から週末の夕方になると、小さな子供が親と手をつなぎながら家の前を通り、近くの駅へ歩いて行く姿を良くみかけた。 「パパ楽しかったね、また遊びに来ようね」  … 続きを読む

「わくわく感」の変容 ― 未来への伸びしろから、今の深さへ

JR九州とnoteのコラボ企画「#わくわくする瞬間」の作品募集のお知らせを見たとき、胸の奥から懐かしい感情がふっと込み上げてきた。 「そうだ、昔はいつもそんな気持ちで満たされていた」という思いと、「あの感覚は、今どこにい … 続きを読む

狭くなった世界が、人生にもたらす深さ

例えばアメリカの大統領が感じている「世界」はとてつもなく広いことだろう。 自分専用の超豪華なジャンボジェット機を乗り回し、世界中の首脳と対等以上の立場で渡り合い、世界中で自分を知らない人はなく、個人的な世界だけでなく、身 … 続きを読む

ひとりで始めた、人生最後の挑戦

十数年前、私は会社勤めと決別し、「男一匹」で個人事業立ち上げを決意した。 どう見ても私は会社員向きの男ではなかった。 「組織の中で自分を制しつつ、マインドを高く保って鼓舞する」という生き方から、どうしても脱線してしまうの … 続きを読む

余白に書き加える物語

自分に立ち向かって過去の悪行を振り返り、自分自身に決着をつけるために毎日エッセイを書き始めて、もう半年近くになる。 それは自分の内側に積もった沈殿物を少しずつすくい上げ、光に当てていくような作業だ。 おかげで、今まで見え … 続きを読む

最高のパートナーとの出逢い

絶対に戻ることができない、一方通行の道があり、その道の両側にはさまざまな果物の木が生えている。 実をつけた木もたくさんある。 その道では、木になっている果実をひとつだけ採って食べてよいことになっている。 ひとつだけだ。 … 続きを読む

幸せは比較ではなく、それぞれの人生の物語の中に生まれる

就職して初めて配属された職場で、隣の課の上司がこんなことを言った。 「他人の幸せは自分の不幸、他人の不幸は自分の幸せだよ」 当時は「なんと大胆なことを言うのだろう」と驚いたが、年月を重ねるうちに、その言葉の半分には確かに … 続きを読む

木の枝に残された巣のように

小さな虫から始まって、多くの動物は「巣」と呼ばれる棲み家をつくる。 それは繁殖のための場所であり、命をつなぐための最小単位の世界だ。 牛や馬、猿のように定住しない動物でさえ、与えられた寝床を心地よさそうに使う。 生き物に … 続きを読む

自分の儀式を生きる

私はとにかく「儀式」が嫌いだ。 若い頃はそれほどでもなかったが、徹底的に嫌悪の対象へと変わったのは自分の結婚式がきっかけだった。   都内の式場で、そこそこ立派な結婚式だった。 しかし普段は堂々として押しが強く、物おじし … 続きを読む

神仏の境界で聞こえる心の声

私の家の近隣には、歩いて行ける範囲に、散歩のついでに週に一度は手を合わせに立ち寄る神社が七か所、寺が二か所、地蔵尊が二か所ある。 最近になって、あることに気がついた。 寺や地蔵尊の前にも賽銭箱や鈴があるのだ。 以前から賽 … 続きを読む

答えのない問いとともに

全力疾走で走り抜けてきた時代が終わると、人は不思議と染みったれたことを考えるようになる。 柄にもなく立ち止まり、「生きるとは何か」などと理屈っぽい問いに向き合ってしまう。 同じ歳、あるいはもっと年上の人が、理屈などこねず … 続きを読む

「無常」は人生を撫でる風のように

私は歴史や文学は苦手科目であったのに、なぜか「平家物語」の冒頭の全文だけは忘れられず、今でもそらんじている。    「祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり。 娑羅双樹の花の色、盛者必衰の理をあらわす。 おごれる人も久しか … 続きを読む

馬車馬は、止まり方を知らない

「時間がない」。 私は昔から、いつもそう感じながら生きてきた。 遊ぶ時間さえなかった。 「時間がない」とは、時間が足りないということだ。 時間が足りないということは、やり残しがあるということだ。   だから私は、いつも一 … 続きを読む

自分にしか残せないもの ― 私の人生をつくった、ただ一つの原理

大河ドラマ「豊臣兄弟!」を観ていたら、秀吉の母が秀吉の弟である秀長に「自分にしかできない事をやりなさい」と言って兄秀吉の右腕となるようにハッパを掛けるシーンがあった。   私は「いいことを言うなぁ」と思うと同時に「自分に … 続きを読む

趣味という語は、私の人生の重さに耐えられない

私は「趣味」ということばに、どこか抵抗を感じている。 本来やるべきものから外れた「生産性のない娯楽」という響きがあり、どうにも馴染めない。   「世の中でどのように定義されているのか」と思い、ネット検索や辞書、各種AIで … 続きを読む

「残そうとして歩いた時間」そのものが私の人生

人はいつか死に、そしていつか忘れ去られる。 それでも私は、この世に何かしらの「形」を残したいと思っている。 それは名誉でも評価でもなく、ただ「生きていた」という微かな痕跡のようなものだ。   形とは、必ずしも目に見えて重 … 続きを読む

「後悔しないで済んだと言いきれますか?」

私が大好きでたまらない映画『男はつらいよ』第17作に出てくる場面の一つだ。 自分の故郷である兵庫県たつの市を訪れた、宇野重吉さん演じる池ノ内青観という老画伯が、若い頃に縁のあった岡田嘉子さん演じるお志津さんと再会するシー … 続きを読む

一声かける勇気

日本人の文化にはある種の閉鎖的な側面がある。 特に、周囲の人とのちょっとした関わり方にそれが表れる。   毎朝、夫婦で散歩をしている。 左手にはレジ袋、右手にはトング。 一目でゴミ拾いをしているとわかる格好だ。 始めたば … 続きを読む

「心のアルバム」に浮かぶ一番好きな姿

久しぶりのかつての同僚に年賀状を出したら、返事のはがきが送られてきた。 珍しい名字なので、ちらりと見ただけで彼からだと分かった。 しかしよく見ると名字に続けて書いてある名前が違い、しかも女性の名前だった。 ドキッとしては … 続きを読む

性癖がつくる人生 ― 選択の源にあるもの

過去を振り返り、「あの時あんなことをしなかったら、その後の人生は変わったものになっていたに違いない。」と思う事はないだろうか。 しかし、もしあの時の選択をやり直せたとしたら、人生は本当に変わっていただろうか。   人生が … 続きを読む

スマホが目覚めさせた、眠れるフォトグラファーたち

スマートフォンの先駆けであるiPhoneが登場したのは2007年だった。 それから十数年、早くも2010年代の後半にはスマホは当たり前の存在になっていた。 今では世界人口の80%以上が所有しているという統計もある。 世界 … 続きを読む

急ぐ夜明けの向こうへ

学生時代の若かった頃、夜遊びに胸をときめかせた。 周りの大人たちが一日の役目を終えて家路についたり、夜の街で笑って過ごしていたり、家でくつろいでいたりする。 昼間の緊張感がすっと消えた後に訪れる夜の世界は、学生の自分たち … 続きを読む

もう走れない身体で、まだ走りたい心で ― 今だから見える景色

上り坂を、リュックサックを背負った若者が軽やかに駆け上がっていった。 「ホッ、ホッ、ホッ、ホッ」と気持ちよさそうに、まるで箱根駅伝の往路を走る選手のように、一定のリズムで身体を前へと運んでいく。 私を追い越してだんだん小 … 続きを読む