春の門出と人生航路

今年も入社式の季節がやってきた。 テレビで報道されるさまざまな会社の入社式風景は、とてもノスタルジックだ。 何と言っても社会人としての第一歩を踏み出す瞬間である。 昔と違うのは、どこの会社でも外国人を数名採用しているケースが多くなったことだ。

 

今日見た番組では、ミャンマー出身の女性社員が、人事部の社員と並んでミャンマーの両親とビデオチャットをし、入学式の様子を見てもらっていた。 今、多くのミャンマー人は簡単には帰国できない。 軍政に反対派だと見なされると拘束されたり、再出国ができなくなったりするからだ。 番組では、大手運送会社で正社員としてトラックの運転手になるインド人男性社員数名も紹介されていた。 私の若い頃は、外国に行くこと自体が特別な時代で、海外で働くなど夢のまた夢だった。 それが今や大学には外国人学生が溢れ、日本語を学んで就職にも挑んでいる。 まさに時代の変化を感じる。

 

私が銀行に入行した五十年前(1976年)にはとても考えられない光景だ。 たしか一週間ほどの新入行員研修を終えてからの入行式(入社式)があったと記憶しているが、一番の思い出は、学生気分百パーセント、社会人としての自覚ゼロだった私は、厳粛な入行式の席上で突然立ち上がるり、大きなストロボを取り付けたフイルム式一眼レフカメラで皆をバシャバシャ撮り始めたことだ。 慌てたのは同席していた人事課の先輩行員たちで、両手を大きく振って「ダメダメ」と制しながら、苦笑いで私の前に立ちはだかった。 壇上に座っていた頭取は、さぞ腰を抜かしたことだろう。

 

番組では何人か新入社員へ抱負をインタビューしていたが、皆が実に立派な言葉で淡々と述べていた。 男性も女性もである。 実際の言葉は忘れてしまったが、とにかく聞いているこちらが恥ずかしくなるほど立派だった。 最近は小学生でも「将来、人を喜ばせる仕事に就きたい」などと言うのが珍しくなくなった。 子どもがませたのか、親が喜ぶ言葉を覚えているのかは分からないが、社会人としてのスタートラインに立ったときに口にする覚悟の言葉は、正直言って「恥ずかしい」と言うより「耳が痛くなる」。

 

スタートラインで何を口にしたとしても、とにかくそこからは新しい職業人生が始まる。 入社式に限らず、結婚式などはまさに家族で生きると言う人生が始まる瞬間だ。 そこには常に前向きで力強い抱負の言葉がある。 飛行機だって、離陸する時はエンジンフル回転させ、最大出力を出さなければ離陸できない。

 

離陸したあとは、巡航速度で安定飛行に入るが、その後は乱気流に遭ったり、急降下したり、失速しそうになったりと、人生航路はさまざまだ。

 

私の飛行は巡航速度で安定飛行に入ったあと、さらに上昇し、この手の機体としては最高高度に達した。 しかし、そこからは波乱万丈の乱気流の中の飛行が続き、一緒に搭乗していた家族は乗り物酔いで相当苦しんだと思う。 あれから五十年経った今、飛行高度をぐっと落とし、ふわふわの雲のすぐ上を舐めるように、楽しく飛行している。

 

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