日本全国で親しまれているNHKラジオ体操は、1928年から始まったそうだが、この100年近い歴史を作ったNHKは本当に素晴らしい役割を果たしたと思う。
今まで何も不思議に思わなかったが、日本でテレビ放送が始まったのは終戦後8年も経った1953年だ。 と言う事はどうやってみんな体操のやり方を覚えたのだろう。 そんな事が気になって調べてみると、全国の郵便局の郵便教員の方々が大変な苦労をして人々に伝えたそうだ。
日本人でラジオ体操ができない人はおそらく一人もいないだろう。 もちろんラジオ・テレビだけでなく、学校でも積極的に取り入れて健康・体育教育の一環としてやって来た事が大きいのだろう。
私は私なりに仕事を通して色々な国々を訪れ、異なる文化の人々の暮らしをたくさん見て来たが、どの国にもこんなポピュラーな「国民健康体操」のようなものは存在していなかった。 それに気が付いた時に、NHKや簡易保険局(当時)、郵便局の果たした歴史的偉業の価値を称賛せずにはいられなくなった。
もともと集団行動には馴染みが薄く、個人行動が優先する西洋の文化の下では、例え機会があったとしても受け入れられる事は難しかったかもしれない。 日本では朝のラジオ放送の時間になると、人々が集まり一緒にラジオ体操をすると言う光景が全国各地で観られる。 それこそ老若男女を問わずである。 これはもう、ひとつの日本文化である。
歳をとって仕事をやめてほとんど在宅で過ごすようになると、例えウォーキングで身体を鍛えていても、身体各部をほぐしてくれるラジオ体操の効果はとても大きい。 私は毎朝1時間ちょっとウォーキングしているが、その後必ずラジオ体操で身体をほぐしている。 これでも運動不足と言うのなら勝手にして下さいと言いたい位の充足感がある。
1957年からは「テレビ体操」と言う番組が始まって、「ラジオ体操第1」、「ラジオ体操第2」だけでなく、1日に何度もある放送時間帯によって、「みんなの体操」、「オリジナルの体操」「リズム体操」などが加えられている。 この「テレビ体操」と言う番組の果たした役割も大変大きかったと思う。
あまり馴染みのない方の為に説明させて頂くと、「テレビ体操」とは番組名で、その中で行ってる体操に「ラジオ体操第1」、「ラジオ体操第2」がある。 別に「テレビ体操」と言う体操があるわけではない。
私はこの「テレビ体操」が大好きだ。 音声だけのラジオ放送と違って、目の間で厳しく鍛えたインストラクターの皆さんが行う体操の動きと姿を見る事ができるメリットは大きい。 ただ見ているだけで、こちらの身体もつられて動いてしまう。 これはとても不思議な反応だ。
毎日見ていると、インストラクターの皆さんの個性が良く見えて来て、特定の方のファンになってしまう。 益々その時間が楽しくなり、一向に飽きないし、あっと言う間に放送時間が終わってしまう。 毎日欠かさず楽しくお世話になっている。
おそらくほとんどのインストラクターの方は日本体育大学や日本女子体育大学の出身ではないかと思うが、数人並んで体操している時、目を疑うほど指の先から足の先まで一糸乱れずぴったり揃った動きをしているのを見て、如何に厳しく鍛えて来たのか否が応でも伝わって来る。 呼吸のリズム、表情の変化までがすべて統制されている。
また、このインストラクターの方の体操は、よく揃っているだけではなく、「身体がここまで曲がるのか!」と驚くほど鍛えた身体の柔らかさを見せている。 運動としての体操と言うより芸術としての踊りにすら見えてしまう。
そんな姿に驚きながら、「よし、ここはもっと頑張ってやってみよう」と、具体的な意欲と目標が出来る事は、ラジオでは絶対に不可能な事だ。
毎日やっていると、たまには「今日はいいか!」、とサボりたくなる時もあるのだが、今やファンになったインストラクターの「お姉さん」達の顔が浮かんで来て、「そうか、ボクを待ってるって言うならやるか!」とTVのスイッチを入れるのだから、我ながら笑ってしまう。