海外で勤務している息子が、数カ月毎に出張で帰国した際に必ず我が家で1,2泊して行くのだがその夜は宴会になる。 私は永年大酒を飲んで来たが、去年あたりから毎日の晩酌習慣をやめ、何かあった時だけ飲む様になった。 息子との宴会が正にそれである。
昔はいくら大酒を飲んでも頭脳も記憶も明晰なままだったのだが、70歳を境にすっかり弱くなってしまった。 今回はいつになく私のテンションが上がっていて、いつもなら「パパには注ぐなよ。マイペースで飲むから!」と息子に言って予防線を張っていたのだが、今回は最初から息子よりハイペースで飲み始め、ウイスキーをガブ飲みし始めた。
しかも息子にあごで「ホイ、注げ!」と催促してたそうだ。 6時から始めた宴会だったが8時過ぎには記憶が薄れ、10時過ぎからは椅子に座ったまま殆ど意識不明だったそうで、息子との妻の会話に合わせて身体を揺ってたそうだ。 私が意識をもどしたのは、妻が「さぁ、もう1時だから・・・」と言い出した時だった。
翌朝二日酔いでふらふらしながら起きて来るとリビングの私の席の横のテーブル上にバイオリンが置いてある。 そんな所に大切な楽器を放置する訳ないので恐る恐る妻に聞いてみると、大変な事実が判明した。
まず夕べ8時過ぎに息子の赴任先のシンガポールの自宅にいる孫たちとLINEビデオがつながり、私は喜んで孫の名前を呼びながらバイオリンを取り出してMy Wayの断片を弾き始めたとの事だった。 酔っぱらってるのでかなり滅茶苦茶だったらしい。 当然私には全く記憶がない!
実は宴会に先立ち、息子の来訪に合わせ、驚かしてやろうと、密かに60年振りに再開したバイオリン演奏を3か月間必死で練習をして、妻のピアノとの合奏を企てていた。 時を見計らって息子の前で妻と並んで深くお辞儀をしてから初「コンサート」を開催し、My Wayを披露した。 その「興奮」が冷めやらないまま宴会に突入したので、こう言う失態を招いてしまったようだ。
失態その2がある。 こちらの方が重症である。 9時過ぎに近くに住む娘が弟である息子に会いに旦那と孫2人を連れてやって来たそうだ。 私は上機嫌で7歳の孫娘を抱き上げたりして大歓迎したのだが、全くろれつが回ってなかったそうだ。 そこでもまたバイオリンを取り出してMy Wayの断片を弾き始めたそうだ。 いつもは賑やかな5歳の孫息子は口をポカンと開けて眼を丸くして見てたそうだ。 これについても全く記憶なし!
翌朝になって、娘に「昨夜来たんだってね? 全く記憶なし!」とLINEを送ったら直ちに寒くてフリーズした熊さんのスタンプが返って来た。
息子は翌日家族の待つシンガポールに戻って行ったが、私の体調は戻らない。 「3日」酔いだ。 私は、もう歳なんだと限界を感じて少し落ち込んでしまった。
妻が笑いながら話してくれた。 一年前の今頃、やはり息子が来て私はへべれけに酔っぱらって、息子が帰ったあとも1週間くらい体調が悪かったそうだ。 そしてその時「あいつのせいだ! あの息子の奴め! あの野郎! 今度来ても絶対飲まないぞ!」と息巻いていたそうだ。 (これも記憶にない!)
性懲りもない息子との酒宴。 またこれから幾つまで繰り返せるだろうか。