犬と子供

私は子供の頃家で犬を飼っていたので、犬と一緒に生きるのが当たり前と思って育ってきた事もあって、とにかく犬が好きだ。

 

道で飼い主の綱に繋がれて散歩中の犬に出逢うと、犬は必ず私を見る。 犬は自分を好きな人をすぐ分かる。 私がその犬に返す眼差しで、犬は私の心を必ず感じ取ってくれる。 そのまますれ違おうとすると私を必死になって見つめ、すれ違ったあともいつまでも何度も私を振り返って物欲しそうに寂しそうに私を見ている。

 

毎朝の散歩でお馴染になった何匹かの犬は、遠くから私の姿を見つけると舌を出してハァハァ言いながら、綱を持つ飼い主の手を引っ張ってこっちに寄って来る。 私の所まで来ると、身体を摺り寄せて来たり、道路に伏せをして尻尾をちぎれんばかりに振ったりもう大喜びである。 犬は何んと可愛いのだろう。 子犬でも成犬でも、小型犬でも大型犬でも区別はない。

 

結婚した翌年、娘をお腹に身ごもった妻にかけた言葉が、「頼むから犬の子を産んでくれ」だったらしい。 最近になってアルバムの中にあった、当時の大きなお腹を抱えた妻の写真を見ながら、その話を聞いた娘が「これって私だったんだよね?」となんとも言えぬ顔をしてたらしい。 犬の子を・・と言った私の言葉はもちろん冗談であったとは思うが、例え冗談でも言ってはいけない言葉だった。 でも半分は本音だったのかもしれない。

 

一男一女に恵まれ、今アルバムをめくると二人とも可愛い子そのものであった。 しかし当時、私は若く、バチ当たりな事に関心は子供の事より自分の事で一杯だったと思う。 可愛いと思って抱きしめた事もあまり記憶にないし、可愛いから何かをしてあげようと必死になった記憶もあまりない。 犬は可愛いくてたまらなかったのに、である。

 

このバチあたりのパパさんが、歳をとって孫ができると小さな子供に対する気持ちは大きく変わった。 目に入れても痛くないのだ。 見てるだけで目がとろけそうになる。 会った時には必ず抱き上げて抱き締める。 

 

先日も、孫娘を公園で散々遊ばせた後、彼女がアイスクリームの自動販売機の前で、ばあば(私の妻)に「アイスクリーム買って」とおねだりしたのだが、家にスーパーで安く買ったのがあるからダメと断られると、じいじにすり寄ってきて「ねぇ、じいじ、いいでしょ?」。 この一言で一発ノック・ダウンである。 「いいよ」と即答で販売機の前に行く。(金は妻に払わせた) こんな事、自分の子供にしてあげただろうか。

 

今や、孫だけではない。 テレビや街で小さな子供を見かけると、思わず「可愛いねぇ」と声が出てしまう。 もちろん犬もである。 どんな子供もどんな犬も可愛いのだ。 たまらなく。

 

人生の最後で、「間に合って良かった事」がまたひとつ増えた。

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