私は「自分をいじめる事」を色々活用している。 ひ弱な部分をいじめると、最初は辛くて悲鳴を上げるが、その内そこがムリムリムリと成長してくる。 その成果は必ず出る。 成果が出て来るとそれが楽しみになる。
私の「いじめ」のうち、私の身体的障害に対する「いじめ」は誰にでも通用するものではないが、それらも含め、何らかの参考になるかもしれないので、体験した4つのいじめをご紹介したい。
1.脳いじめ
一番直近では、このエッセイ書きがいい例だ。 何かのテーマに従って文章を書くなんて、私にとっては大変な苦手科目だ。 書くこと自体は好きだが、それは自己分析とか、資料をまとめるとか言ったものだ。 要は科学系に対して文学系はまるで駄目なのだ。
73歳を超して新たに何か挑戦しようとしても、出来る事は限られている中で、自分の人生の自己反省を兼ねてエッセイ書きなら、中身はともかく何とか始めることくらいはできるかもしれないと思い始めてみた。 しかし、と言うか、案の定と言うか、これは私にとって大変な「脳いじめ」になっている。
最初から毎日一篇休みなく書き続ける事に決めた。 休みなし! 休み休みなら挑戦にはならない! と自分を自虐的に鼓舞している。 最初の何本かは最初から考えていたテーマがあったので難なく書けたが、その後がだんだん辛くなってきた。 朝から晩までエッセイの事で頭は一杯だ。
白紙に向かっていつまでも念じるように考え込む事もある。 胸ポケットには小さなノートとペンを入れ、思いついたらすぐにメモる。 常に書く事に思いを巡らせ、なんとか今まで続いている。 相当、脳には血流を送り込んでいる。 多分、多分であるが脳の活性化に役立つ事が期待できそうだ。
2.指いじめ
このエッセイ書きには一日中パソコンのキーボードと格闘しなければならないが、これがまた別のいじめになっている。 私はむち打ち症(頸椎ヘルニア)の後遺症で右手首から先が若干不自由である。 外見的には全く普通なのだが、例えば水の入ったコップを上から5本の指で掴む様にして持ち上げる事ができない。 その形だと指に力が入らないのだ。
この手指でパソコンのキーボード入力をするのは結構辛い。 左手は普通だから全く問題ないが、右手は指が突っ張り勝ちで、正しい指使いはできない。 昔は全く手元を見ないで両手でさらさら入力できたのだが、歳をとるにつれ不自由度が増して来た。 おかげで誤入力が多くて一つの単語を打つのにひどい時は5回も6回も打ち直す時がある。
こんな状態だから右手は疲れやすくまるでリハビリ運動だ。 そう、まさに「指いじめ」のリハビリをやっている。 おかげで最近は、相変わらず右手は突っ張るし疲れるのだが、かなり速く入力できるようになって来ている。 まだまだ誤入力が多いが、速度がかなり速くなっている事を考えたら大躍進と言えるのではないかと思う。 また、私の様に障害がない方でもキーボードを打ちまくる事は、適度ないじめで良い運動になるのではないだろうか。
3.手首いじめ
楽器の演奏でもいじめと闘っている。 私は60年ぶりのヴァイオリン演奏の独学習得に挑戦している。 右手首から指先まで力が入らなかったり突っ張ったりするのでヴァイオリンの弓の操作が不自由なのだ。 柔らかく弓を動かしにくいので、弦の上で弓が小さく跳ねたり滑ったりする。
これでは最初からあきらめてしまう人は多いと思う。 更に右手の小指の先の間接が、昔の骨折の治療が不完全でかぎ型に指先が少し曲がっているのに加え、力も入れられない。 これは結構障害になり、演奏しながら弓を正しく保持し続けるのが大変難しい。
私はとにかく弾きたいの一心で、少しでも出来るようにと毎日不自由な恰好・形のまま練習を欠かさず続けて来た。 やっているのは「手首いじめ」である。
それが、気が付くと右腕・右手・右指の不自由な障害は全く改善された訳ではないのに、ヴァイオリンの弓を上げ下げする動作だけはかなり楽に、しかも安定してできるようになって来た。 これには驚いた。 あまり期待していなかったのだがこんな事が起こるんだとびっくりしている。
4.ピンポイントな脳いじめ
かなり前になるが40代から50代にかけて韓国語、タイ語、タガログ語(フィリッピン語)、中国語の独習を始めた。 語学習得は学生時代からの私の趣味だ。 既に身に付けていた英語・スペイン語に続く学習は、新しい言語に取り組むごとにどんどん簡単になって行った。 3番目にあたる韓国語を習得した後は本当に楽になった。
自分の脳のいじめ方が分かって来たからだ。 所詮語学と言うのは頭の優劣は関係ない。 運動機能の習得に似ている。 その国の人は子供でも教育を受けてなくても話せているのだから良く分かる。 複数の語学習得を経験して行くと、「学ぼうとする語学の特性により自分の脳のどこをいじめたら良いか」が分る様になって来る。 それが分かると語学の習得は大変速く・簡単になる。 この「ピンポイントな脳いじめ」のお陰で、最短で効率の良い勉強ができたのだと思う。
さてこんな私が、どういういじめをしたら効果があるのか分からないものがある。 「失われた記憶力回復」と、「記憶力低下の阻止」だ。 これは喫緊の課題で是非とも解決したい。 そんな事できたら世話ないと言われるかもしれないが、少なくとも「記憶力低下」については、阻止とまでは言わなくても、速度を極限まで低下させる方法ならあるかもしれない。
どこかをいじめれば解決するのなら、いじめる事自体にはかなりの自信がある。 ここは最後まで諦めずに探って行きたい。