禁酒・禁煙なんのその

ゴミ拾いしていると、かさ張る・かさ張らないではなく、拾う回数ベースで圧倒的ナンバー・ワンはタバコの吸い殻である。 特に電車の駅への通勤路は恐ろしい「吸い殻街道」となっている。 1時間も歩けば拾うタバコの吸い殻は軽く100本は超えてしまう。 近年は喫煙人口が減ったと言いながらまだ20%近くの喫煙率となっていると言うのが頷ける。

 

拾っていると、私が昔吸っていた紙巻きたばこ以上に加熱式タバコが多いのにびっくりする。 吸い殻や濃い煙が出ないので、抵抗感が少ないし、外でライターで火をつける際に吹く風を気にする必要もないからだろう。 私は数年前まで永年、毎日紙巻きたばこを60本近く吸って来たので、すべての現象の理由や、ポイ捨てする人の気持ちは100%わかる。 だから腹は立たない。

 

最近は何処の家庭でも奥様の発言力が向上し、煙たくて部屋を汚し子供の健康にも良くないタバコを家で吸わせて貰えない男性の多い事、驚きである。 私の若い頃は考えられなかった事で、食卓でもベッドの中でも風呂に入りながらでもトイレの中でも吸うのが当たり前で、家中に何個も灰皿があった。 それを嫌がる奥さんは少なくとも私の周りには一人もいなかった。 そういう奥様方の多くは同じような父親の家庭で育って来たからだ。 生まれたばかりの我が子に「お~よちよち」と言いながらタバコを吸いながら抱き上げる、なんて今では絶対に考えられない事もした記憶がある。

 

このタバコ中毒の私がきっぱり禁煙ができたのは、医者の定期健診で胸部CT撮影をしたところ、肺気腫(肺の中の小さなブドウの粒状の組織同士がくっついてひとつの大きな粒になってしまうような病変)と診断されたからだった。

その医者はまるで「あんた肺気腫だ!肺気腫だ!」と喜んでるがごとく、LINEでCT写真を何枚も送って来た。

 

私はそれまで内臓の健康について問題があったことはほとんどなかったので、その医者が嬉しそうに「このまま喫煙を続けて症状が進行したら最後は酸素ボンベを抱えて吸入しながらの生活になるぞ」と言うのを聞いて即日タバコをすべて処分し禁煙をした。

 

驚かされた効果はあった。 一度も誘惑に負ける事無く、完全に禁煙ができた。 もちろん、夢は何度も何度も見た。 美味しく吸ってしまうのだ。 「ああっ!!とうとう吸っちゃった!!」と叫んで目が覚めた事が、何度あった事か。 夢の中の出来事だと思ったら、夢でなく本当に吸っていて「あ~~ついにやってしまった!」と言う二重の夢も何度も見た。

 

ある時仕事で貸切りバスに乗って仲間と一緒に移動した時、途中の休憩所で止まったのでバスを降りると、目の前で先に降りていた10人近くが輪になってタバコを吸っていた。 喫煙率の高い映像業界ならではの光景である。 私は「うまそうに吸ってるなぁ」と思いながらその横を通り過ぎたのだが、その時の煙の臭いが鼻を突いた。 「なんと言うヤニ臭さだ!」と、その不快感にびっくりして小走りに通り過ぎた。 そして次の瞬間そう感じた自分にびっくりした。 変われば変わるものだなぁと思った。

 

しかし事は、そう単純でもない。 外を歩いたり、TVでタバコを吸っている場面に出くわすと「あ~~~吸いてぇ・・・」と強烈に思うのだ。 これだけは今でも全く変わらない。 すれ違う車のドライバーがくわえタバコで運転しているのに出くわすと、思わずよだれが垂れそうになってしまう。 

 

ただし、そうなっても昔と違うのは、その先に続く次の二点だ。

一つは実際に臭いを嗅ぐとヤニ臭いのにびっくりする。

もう一つは、吸いたいと思うのはその瞬間だけで、その場を離れるとすぐに忘れてしまう。

 

まぁそうしてタバコとは決別できた。 しばらくは尾を引くが、困難な事ではなく誰でも成功できる。 私が思うには、一発ガツンと効くきっかけさえあれば全く以って簡単な事なのだ。 私の様に医者から脅かされるとか、具体的かつ緊急性を伴った理由があれば答えに迷う事は絶対ないはずだ。

 

そう言う材料がない人は、自分で気が付いた時には事態が深刻化していて手遅れの場合が多いと言う事を良く考える事だ。 誰でも自分だけは大丈夫だ、もう少し位大丈夫だと言う志向に陥る物だ。 私の過去の同僚だった愛煙家4人が、肺がんで60代の若さで亡くなっている。

 

さて、健康と関わりが多い習慣のもう一つの代表格は飲酒であろう。 これについては私は幸運だった。 昔から大酒飲みで一晩で瓶ビールワンケース20本開けた事もある位だったが、酒に飲まれる「中毒」ではなかった。 飲まないなら飲まないで平気なのだ。 おそらくこれは身体的な能力が関係しているのではないかと思っている。

 

いわゆるアル中と言うのは、週末は朝から飲むとか、いつも酒で酔っているとか、とにかく酒なしではやってられない様だ。 私は昔から大酒を飲むときはガンガン飲むのだが、飲み終わったら今度はガンガン酔いを覚まそうとして、夜寝る時はかなり覚めていた。 飲み終わったのに酔っているのは好きではなかったし、しらふになって趣味とかの時間に使いたかったからである。 言い換えれば覚ます事が出来るアルコール処理能力が身体にあったと言う事なのだと思う。

 

ただ、夕飯前からの晩酌だけは省く事はできず、つい最近まで続けていた。 それもまずビールから初めて、ワインのボトルは空けるし、焼酎やワイン、ウイスキー、日本酒なんでもござれで、かなりの量を飲んでいた。 それが1年近く前ころからさすがに歳を考えて、ビールだけにするようになった。

 

それも500ml缶を2本飲んでいたので決して少なくはないのだが、飲酒をビールだけにする事ができれば、その先には次の様な救いの道がある。

 

ある日、定期健診に毎月通っている病院の待合室で、目の前に色々なパンフレットに交じってアサヒ・スーパードライ・ノンアル缶が数本並んでいて、どうぞお持ち帰りくださいと表示してあった。 まぁただなら試してみようかと一缶持ち帰ったのが運命を変えた。 

 

「ん? これまずくないじゃないか!」と驚いたのだ。 アルコール版と比べて独特のスッキリ清涼感も変わらない。 それでワンパックをスーパーで買って来たのが事の始まりで、それ以来ずっとノンアル専門になってで気持ち良く晩酌をしている。 まったく不満はない。 満足感はアルコール版と変わらないのだ。

 

それどころか、息子が帰省して来たときにアルコール版をたくさん買ったので、一緒に飲んでみたのだ。 久しぶりに。 「ウッ! まずい!」と感じたのだ。 これには本当に驚いた。 まぁ嗜好品なので人により差はあるとは思うが、少なくともその位可能性がある物だと言えるだろう。

 

重度のアル中の人の中には、ビールでは全く物足りないだろうから通用しないだろうが、酒をやめられなくて困っている人で、特にビールしか飲まない人は是非試して頂きたい。 酒屋さんやスーパーに行けば多種多様なノンアル・ドリンクが販売されているので、自分の好みに合う物を探してみたら良いと思う。 サワー系を楽しんでいる人も、ノンアル製品があるので同じ様な幸運が待っているかもしれない。

 

私がタバコも酒をやめたなんて、昔の私を知っている人が聞いたらまず信じないだろうと思う。 しかし不可能ではない。 大変な事でもない。

今は金だけでなく健康をも蝕んでいたこの生活習慣から決別出来て本当に良かったと思っている。

 

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