宗教が創りあげた人類の文化資産

無宗教の私が世界を旅して興味を持ったのは、どの国でも宗教への信仰が文化や生活の中核を成していて、日々の生活と切っても切れないつながりがある事だった。

 

日本では仏教や神道が伝統的な宗教とされている。 特に神道は日本発祥の宗教であり、特定の教祖も教えも持たずあらゆるものに神が宿ると言う大変特殊な形態を持っている。 そこに後から伝来してきた仏教を比較的おだやかに受け入れて「神仏混合」の文化を形成したと言う事で、諸外国で見られる状況とはかなり異なっているようだ。

 

日本では多くの人にとって仏教や神道は身近な「文化」として親しまれ大事にされて来ているが、多くの諸外国では宗教がもっと生活や考え方の隅々まで浸透し、物の善悪の判断を決定づけたり、人々の行動を大きく支配している。 特に無宗教の人が多いと言われる事もある中国は別として、ひとたび海外に出かけてみるとキリスト教やイスラム教、ヒンズー教など数多くの敬虔な信者で溢れかえっているのに驚く。

 

スペインに滞在して見て来たキリスト教文化、インドやフィジーで見て来たヒンズー教文化、スペイン南部やインドネシアで見て来たイスラム教文化、そしてミャンマーやタイで見て来た仏教文化など、どれもとても感銘深い体験をさせてくれた。 

 

どの国でも、もしその宗教がなかったら、今ある文化も姿も存在しなかった事は間違いない。 歴史あるどの国を訪れても、そこに残されている文化の全ては宗教が作ったものだ。 観光で訪れる名所とされるものの多くはその足跡であり、もしそれが無かったら観光客が訪れる場所は何処にあっただろうと考えてしまう程存在感は大きい。 それだけ宗教は文化を形成し一つの国の姿を作って来たと言う証しだ。

 

日本人にとって、キリスト教は日本にも伝来したし、世界的にも信者数が多いので、テレビや映画なども通してどんな文化であるか馴染みがある。 しかしその他の宗教について、例えばイスラム教、ヒンズー教に至ってはほとんど馴染みがない。 また仏教については、馴染みがあるようで、それは日本に伝えられた大乗仏教だけで、それも日常的にその世界の深い所まで接している人は限られていると思う。

 

もちろん私には宗教の専門的な事は分からず、あくまでも体験や見聞きした範囲に限られるのだが、世界の四大宗教については垣間見る機会があった。 どの宗教も信者を惹きつけている事が納得できる荘厳な姿を見せていた。 

 

キリスト教のカトリック聖堂の荘厳・重厚・華麗な雰囲気の中での礼拝は、直接接点がない日本人であっても思わず惹き込まれてしまう世界だった。 どの宗教も、もし私がそこで生まれ育っていたなら、自然にその信仰の世界に入っていた可能性は否定できないと感じた。

 

イスラム教のモスク(礼拝堂)で床に敷いた敷物の上で男性だけがひざまづいて頭を床に当て続けるお祈りの様子がとても印象的だった。 偶像崇拝がが禁止され、ご本尊が祭られてない礼拝堂の雰囲気は今まで見た事もない世界だった。

 

ヒンズー教の寺院で床にあぐらをかいて座り顔の上に合わせた両手を上げてお祈りする様子がとても印象的だった。 沢山並んで描かれている神々の姿はいくら見ていても飽きない魅力があった。

 

また同じ仏教でも初めて見る小乗仏教(日本は大乗仏教)の世界は、仏教寺院で床にぴたっとひれ伏して長時間お祈りする姿にとても胸を打たれた。 独特なリアルに表現された巨大な仏像の姿には目を奪われた。

 

スタイルも雰囲気も違うが、どれを見てもその迫力に圧倒される。

 

歴史書をひも解けば、民衆の意思を統一しその社会を支配しようとして誕生させた、もしくは利用した物が宗教であった様だが、信者側から見たら、どの宗教も「心の安らぎ」を得る為に信じて大切にして来た物に違いない。

 

私は無宗教なので、どの宗教も平等に畏敬の念を以って拝見させて頂いている。  どの宗教の信者も、心の拠り所としてその教えに心から真剣に向き合っているのが良くわかる。 たくさんの信者が集まって一斉にお祈りしている姿を見ると、宗教以外の何がこんなに人間の心を統率できるだろうかと思う。

 

ただ、信仰はどうしても排他的になり、異宗教間、異宗派間での対立に発展して来た。 歴史上宗教戦争は世界各地で幾つも繰り広げられた。 いまだに中東では聖地を巡った対立・闘いが繰り広げられている。 

 

教祖や神を敬い慕っている内は良いのだが、それだけでは収まらない。 信じると言う事は「疑わずに確信を持つ」事なのだから、言い換えれば「盲目的になる」と言う事だ。 つまり無条件の愛だ。 愛は無条件になると、時として他者を受け付けず排除しようとする。

私は無宗教だからそんな事が言えるのだろうが、せっかくの崇高さを感じるとても魅力的な人類の文化資産を守りながら、何とかお互いに争う事はなく尊重し合って、それぞれの世界をいつまでも大切に輝かせて行って貰いたいと思う。

 

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