【このページの最終更新日:2011年5月21日】
T. 基本構想
自転車モービルと言えば、アマチュア無線駆け出しの貧乏学生ハムの定番チャレンジ項目であったと思いますが(少なくとも40数年前の当局はそうでした)、何を今更還暦を控えてこんな道に再び踏み込んだのか・・・・
1.近年のエコ志向にマッチ!
2.最近発生した東日本大震災で、「走る」と言う点においてガソリンが無くても動く自転車の有効性が大きく見直された。
3.最近発生した東日本大震災で、「通信」に関して、携帯電話が如何に役に立たないか、無線が如何に役に立てるかが改めて証明された。
4.健康の為に良い!
と、言う事で、正に来るべきしてこの時来る!の感すらあります。
いい歳して、大きなアンテナゆらして自転車こぎながら無線ごっごしていて周りの目が恥ずかしくないのか??!!
→ はっきり言って恥ずかしいなんてもんじゃない! 洞穴があったら自転車ごと中に入っちまいたい位です。
しかし! それを押してもやる価値に軍配を上げる神の声が聞こえたのです。
まずはベースとなるチャリの購入です。 巷にはマウンテンバイクだとかカーボンフレ−ムのなんとかだとか高級チャリが溢れていますが、とても手が出ません。
かと言ってママチャリだけは避けたい。
と、言う事で色々探したら、結構いいものが見つかりました。 リアの荷台がなくてフレームもいい形、ハンドルはアルミ製で一文字、サドルもスポーツタイプだが、ちゃんと泥除けも付いている(水たまり走って背中と胸に泥水で筋描いて喜びたくない!)実用性の高さも良し。 暗くなると自動点灯のオートLEDライトの電源は、タイヤゴリゴリ式発電機の1/5の軽さと言われるインナーハブ・ジェネレーター。 前かごもママチャリ・カゴとは一線を画したナイスデザイン。 ブレーキは効き味抜群のVブレーキを装備のギアは6段。 タイヤ・サイズは大柄な当局にマッチした27インチ。
これだけの身に余る仕様にも拘わらず、ホームセンターで現品限り(リア・フェンダーに小さなキズ有で)で18,800円でゲットできました。
しかし、いくらスポーティだからって言ったってリアの荷台が無いのは二人乗りはしなくてもまずはアンテナの設置にも困ってしまうので、自転車パーツとして売られている荷台をインターネットで探して購入しました。 小柄ですが大変がっちりとした作りで、サドル・ポストにしっかりと固定できます。 アンテナ・ベースにもってこいです。
価格は2,000円ほどでした。
さっそく取り付けてみました。 サドル・ポストに取り付けるので、普通のリア荷台より取付位置が高くできるので大変具合が良いです。
5mm厚のアルミ板を加工してモービル基台用のコネクター・キットを取付ました。 ローカル連絡用の430MHzと、DX(国内電離層伝搬も含む)通信用のHF帯と、左右に2か所取付ました。
430MHzは手持ちの短めの適当なホイップをそのまま使う事にしました。 問題はHF帯のアンテナです。 幸いHFモービルは、自動車モービルで永年苦労して来ましたからお手の物です。
当局の現在の自動車モービルで使っている、終着駅とも言うべき総合的に見てベストなシステムをそのままチャリでもトライする事にしました。
すなわち、HF帯の10MHz以下の適当な周波数で共振させたエレメント(すなわち電気的実効長が15m以上のロングワイヤ/ホイップと言う事になります)にATUでHF帯の全バンドにQRVしようと言うものです。
アンテナは、手持ちのジャンク部品を組み合わせて、あっと言う間にベースローディング・ホイップが完成しました。 M型のホイップアンテナ用のコネクタにネジピッチ変換アダプターを介して、かなり昔の何処かのメーカーのセンターローディング・ホイップの7MHz用と思われるコイル部分を接続し、ステンレス線をステンレス半田で接続して、全長1.3mほどのベースローディングホイップが完成しました。 共振周波数は測定していませんが、アンテナ・アナライザで測定したところ、6.8MHz、19.6MHz、48MHzなどでSWRがぐっと落ちます。車体を手で触
ると1.1くらいまで落ちますから、ATUを介せば問題なくオールバンドで使えるはずです。
出来たところで、FT-817を内蔵電池のまま前かごに置いて、とりあえず試験走行?を行いました。
7MHz帯のSSBがS7から9+でバンバン聴こえるのにはニンマリしました。 しかし自転車でHFのSSBやCW聴くのは初
めて!なんとも不思議な感覚です!
これは結構使えそうです!SSB-DXも必ず実現する手ごたえを得ました。
さて、次は電源対策です。 シールド・バッテリーを搭載するのは異論がない所ですが、できたら充電機能が欲しい所です。
自転車の発電機は基本的にはどれでもせいぜい6Vの3Wが標準となっており、12Vに昇圧すれば半分の1.5W(充電電流にして約100mA)とさみしい限りです。 しかも自転車の発電機の規格は時速15Kmで走り続けた時の数字です。
そこで白羽の矢が当たったのが、最近のエコ・ブームで脚光を浴びている、ソーラー・エネルギーです。
ソーラーパネルはかなり以前から流通していましたが発電量が小さいのが多く、中々実用性のある物が安価に手に入りませんでしたが、調べてみると中国のお陰で、なんと開放電圧21.6V、負荷電圧最大17.5Vと12Vバッテリー充電にぴったりの仕様で5Wの出力が、たったの1,980円で売られていました! サイズがなんと取付けたばかりのリア荷台にぴったり!
充電電圧を制御するコントローラーも1,200円の破格品を発見。 バッテリーは2.6Ahのシールドバッテリーを2,000円で購入しました。(後に9Ahのシールドバッテリーに入替・・・後述)
ソーラーパネルが無事取り付けられました。 それにしても良くも見事にサイズがリア荷台と合ってくれたもんです。
さて、いよいよリグの搭載です。 チャリモの最大の難関はここではないかと思います。 前かごに入れた手提げ袋にリグ入れて、降りる時は手提げ袋ごと持って行ってしまうなんて事はやりたくありません。 自転車に固定されてないのではモービルとは言えません。
固定するとなると色々な問題に直面します。
1.操作しやすい位置にどう固定するか
2.急に雨が降って来た時にどう機器を守るか
3.ちょっとした間の駐輪中の盗難防止対策
4.ハンドルが極端に重たくなったりする事は避けるなど安全性への配慮が必要
まずこれらの問題をクリアしなければなりません。
予定している搭載無線機ですが、430MHzはALINCOのDR-420モービル用トランシーバー(後にヤエスFT-712Lに入替・・・後述)と、HF帯はヤエスのFT-817ND(5W)です。
ATUは米国のLDG社製に安くて小型な物が何種類もあります。 サイズはFT-817やDR-420とほぼ同じサイズですので、それを念頭に置いて、搭載方法を検討しました。
最初はアルミシャーシ、パネル、アングル材を駆使して、取付金具を自作するつもりで、いろいろ構造を検討していたのですが、盗難防止や雨天対策まで考えに入れた時に、待てよ? これは何か流用できるものがあるはずだ!とひらめきホームセンター通いが始まりました。
ありました!! なんと珍しい上開きのアタッシュケース状のアルミ・ボックス! リグを縦に入れて深さぴったり!横幅が前かご内寸の31cmにぴったり! 防滴OK! 鍵OK! それがたったの1,980円!!!探して見るもんです。 あ〜〜〜有難や有難や!
取付はステンレスのスクリュー・ファスナーで前カゴにガッチリ固定できました。 ギリギリと締めあげましたので、全くビクともしません。 前側の右下に穴を開けて同軸や電源ケーブルを配線できるようにしました。 これで昼間のちょっとした間の駐輪で盗まれる心配は皆無です。(自転車は念の為チェーン・ロックで柱に縛り付けて置きます)
突然の雨が来ても蓋をパタンと締めればOKです!!(写真のケースの取っ手は不要ですのでその後取り外しました)
注文していたLDG社のATU、Z-11PRO2が届きました。(UPS便指定で3日で届きました) 価格は159ドルですが、折からの円高で12,900円ほどです。
FT-817専用のZ-817なら更に30ドル以上安く買えますが、Z-11PRO2は、パワーが100W機でも使える、SWRのインジケーターが3色で5通りに表示されて見やすい、SSB/CW送信だけでSWRが設定値以上に高いと自動的にオートチューンを始めてくれる、などの数々のメリットがあるので、こちら購入しました。 コスト重視ならZ-817を選べば1万円以下です。 なんと国産のマニュアルのQRPアンテナチューナーより遥かに安いのです!!!写真は、搭載するリグ3台を重ねたところですが、大きさがほぼ同じです。(ATUは後にZ-817に入替・・・後述)
前かごへの重量集中を避ける為にバッテリーはサドル下のフレームにステンレス金具を使ってしっかりと固定しました。
ここは極めていい場所で自転車の操縦性に与える影響はほとんど感じる事ができません。
リグもとりあえずうまくケース内に収まりました。 蓋も閉まります。 とりあえず仮にクッション材をいれて実際に動かして様子を見る事にしました
厳しい環境とQRPのチャリモでは、CWは欠かせないモードとなるでしょうから、パドルをなんとかしなければなりません。
幸い、FT-817の移動運用用に購入してあった中国製のパドル(7,000円くらいでした)がありましたので、その重たいベース部分を取り外して、ハンドルにUボルトで固定したステンレス製のL型金具の上にネジ止めしてうまく取付る事ができました。 偶然に操作性・フィーリング共に抜群で、走行中にもオペレートできます!
ケースの底には穴を開けて外側からATUに同軸を取りつけています。 ATUの奥行が若干予想より長く、ケースの蓋が閉まらなかったので、苦肉の策でなんとか逃げました。(笑)
とりあえず試作車が仮完成しました。 さぁ、いよいよデビューQSOです!
家の前にある名栗川の河川敷にある公園をのんびり走りながら最高の気分です!!
人とすれ違うと思いっ切り恥ずかしいっ!!!
まずは各バンドのATUの動作確認です。
なんと!いきなり3.5MHzでSWRは1.5以下と見事にチューンが取れてしまいびっくりしました!
結局7/14/18/24/28MHzの各バンドでも同様にチューンが取れました。 エレメントのインダクタンンスの関係で、10/21/50だけはチューンがとれませんでしたが、エレメントの長さかコイルのインダクタンスをちょっと変えてあげればどの様にでもなりますので心配はいりません。(もともと、どのATUでも1/2波長の整数倍にだけはチューンが取れませんので、すべての運用希望バンドがそれにあたらないように長さ/インダクタンスを調整してあげる必要があります)
最初はカウンターポイズがないと自転車のボディでは無理かなと思っていましたが、庭先の実験でもつけても変化がなかったので、つけていません。 予想を上回る見事な整合振りです。
10MHz以上はコンディションが悪く開けていないようですので、まずは手始めに7MHzのCWを試してみる事にしました。
チャリモでも7MHzは強力に入って来ます。S9+振って入感する局もたくさんいます。
休日なのでJCGの移動運用している局がたくさんQRVしていましたので、これ幸いとさっそくコールしてみました。
なんと!しょっぱなからコールバックがありました!
気を良くしてあと2局にもコールして無事QSOが成立しました。
12:00 7.013MHz JH0PPU/0(新潟県東蒲原群移動) 599-599
12:27 7.011MHz JO1MOI/1(埼玉県秩父郡移動) 599-599
12:30 7.014MHz 7N3CNW/9(石川県河北群移動) 599-599
いやぁ、万歳!万歳!です。 気持ち良さは自動車モービルの比ではありませんね。
恥ずかしい思いをした分だけ爽快!爽快!!