やさしい「相対性理論」Q & A

【このページの最終更新日:2001年6月28日】

名前は良く聞くんだけど、やたら難しそうで...

宇宙の歴史や仕組みを調べて行くと、必ず避けて通る事の出来ない理論上の壁にぶつかってしまい ます。「我々が日常生活で見るもの体験するもの」ではどうしても説明し切れなくなってしまうの です。

その壁を打ち破ったのがドイツの物理学者アインシュタインが1905年から1916年にかけて発表した 光や重力に関する理論「相対性理論」なのです。

やたら難しそうなのは、「我々が日常生活で見るもの体験するもの」ではない世界(四次元の世界) の理論だからなのです。 だから難しそうで当たり前なのです。



要は、どう言う理論なの? 理屈はいいから、結論だけ教えて!

いきなり結論を、と言われても困るんだけど、あえて言えば

重力の強い場所では光は曲がり (と言う事は空間が歪み)、エネルギーが失われ (と言う事は波 長が長くなり色は赤色に近づく)、時間はゆっくり進む。

一定の速度で移動している物 (慣性運動) の 大きさ、質量、時間 は絶対的なものではなく、 移動速度が 光の速さ に近づくにつれ、それぞれ変化する。(大きさは縮み、質量は増え、時間 は遅れる)

の二つに集約されます。前者を「一般相対性理論」後者を「特殊相対性理論」と呼んでいます。



ちっとも理屈抜きじゃないじゃない!

この位の理屈は勘弁して下さい! 「我々が日常生活で見るもの体験するもの」でない世界なんで すから、多少は「頭」で考えてもらわないと...



だいたい重力で光が曲がるってホント? 光は直進するんじゃないの?

ホントに曲がるんです。1919年5月29日の皆既日食の際、真っ暗になった昼間の空によみがえった 星空を、世界中の天文学者が注目しました。アインシュタインが予測した通りに、真っ黒になって いる太陽のそばに見える星の位置が本来の位置からずれて見えたのです! しかも、アインシュタ インが計算した通りの位置にずれていたのです! 遠い宇宙から届いた星の光が、太陽のそばを通 過する際に、太陽の強力な重力で捻じ曲げられてしまったのです。



別に皆既日食で星の位置がずれたって、そうでない時ちゃんと見えてれば....

問題は太陽のことだけではないんです。 宇宙に無限にある星などの天体はみな重力を持ってい ます。 所詮我々が地球で見ている彼らの姿は、それぞれから発した光がお互いの重力で影響を受 け、捻じ曲げられて届いて見えている姿でしかないのです。 見えているものがその真の姿とは 限らないのです。 

光が曲がると言う事は、その空間が歪(ゆが)んでいる、と言う事なのです。



そうかぁ..でも時間まで遅れちゃうってそんなバカな!

物は原子と言う存在でできているのはご存知と思いますが、その原子は種類によってそれぞれ決ま った回数で振動をしています。ですから、その回数をはかる事によってどれだけ時間が経ったか測 ることができます。(この原理を応用した基準時計が原子時計ですね)

太陽は地球より重力が大きいので、太陽光線の中からある原子の振動回数を調べ、地球上の同じ原 子の振動回数を比較してみれば良い訳ですね。実際に測定してみると、アインシュタインの予測通 り、太陽の方が原子の振動数が少なかった(100万分の2)のです。

時間になおすと、太陽で1秒経過した時には地球上では1.000002秒経過している事になるのです。



たかだか100万分の2秒なんてどうだっていいじゃない...

宇宙には太陽よりももっともっと重力の大きい天体が無数にあります。そうなると時間は地球の何 分の1、いや何百分の1のスピードでしか経たない天体もあるのです。 

更に、身の毛がよだつ話しがあります。「ブラック・ホール」です。 この天文フォーラムの「恒 星の一生」に、巨大質量を持った恒星は最後に爆発を起こして「ブラック・ホール」になると書い てありますね。 この恐るべきブラック・ホールは無限大の重力を持っているのです。 

ですから、まず近くにあるものはすべて吸い込まれて行きます。その無限大の重力で光は曲げられ て吸い込まれるだけではなく、吸い込まれたら最後、二度と出て来る事はないのです。 そしてこ の無限大の重力を持つブラック・ホールの中では「時間」は無限大に遅くなる、つまり止まってし まうのです!

光が曲がり、二度と出て来れないこのブラック・ホールこそが三次元の世界で起こりうる最大の空 間の歪みであり、四次元の世界への入り口と言うべきかもしれません。 時間が止まるその存在が 高さ時間を加えた四次元の世界への入り口であり、タイム・マシンが通るべき道なのです。



げげぇ〜...恐い! 何だか頭がクラクラして来た! それじゃぁ...「一定速度で移動している物の大きさや質量や時間は移動速度により変 化する」ってどう言う事?

この論理の出発点は、すべての物の運動は相対的であって、どちらかが絶対的な基準を持っていて 他方が運動しているのではない、と言う事と、光の速さは不変であると言う事の2つにあります。



「すべての物の運動は相対的」ってのは分からないではないけど、光の速さは絶対に変わ らないの?

そうですよね! 全ての運動は相対的ってのは、電車に乗ってて外の景色が流れていても、それ は自分が動いているのではなく、外の景色が動いていると思えば、思えない事もないですよね。

光の速さは、ちょっと不思議です。 光の速さは秒速30万Km/h(正確には299,792.458Km/h)です が、これは絶対不変なんです。

例えば、時速100Kmの車が向かい合って走れば、お互いの相手に対する速度(相対速度)は 100Km/h+100Km/h で、時速200Km/hですれ違う事になりますよね? では、もし光の速さ(秒速 30万Km/h)で向かい合って走行したらどうなるでしょう? 30万Km/h+30万Km/h=60万Km/hには ならず、やはり30万Km/hですれ違う事になるんです!



なんじゃそりゃ? なんで普通の速度なら足し算なのに、光の速度だけそうは行かないの?

う〜ん、そこまで突っ込んで聞かれると、ちょっと細かいこと言わなくちゃならないんだけど、実 は普通の速度だろうと、光の速度だろうと、すれ違うときの相対速度(2つの速度の合成と呼びま す)は、単純な足し算式ではないのです。 具体的には 合成後の速度 = (速度1+速度2)/(1+(速度1X速度2)/光の速度の2乗) と言う式であらわせるんです。

あ〜、嫌だ嫌だ!なんて言わないで下さい。 別にこの式を理解して欲しいと言ってるのではあり ません。 要するに我々の日常生活で発する程度の速度を代入して計算すると、単純な足し算(上 の例だと時速200km)とほぼ同じ結果になるんです。 それが光の速度に近づくにつれ単純な足し 算との差が大きくなってって、光の速度に達すると元の光の速度その物と言う結果になるんです。



ええっ? それじゃ、100Km/h同志の車がすれ違っても、正確には200Km/hではないの?

その通りです。計算してみて下さい。199.99997778Km/hになるでしょ? この程度の誤差は日常生 活では問題とならないだけで、実は単純な足し算ではないのです。 小学校の算数の問題で良く出 てきますよね? 時速何Kmの電車が東京から、何Kmの電車が大阪から同時に出発する何時間後にす れ違うでしょう、とか言う問題。 あの答えは正確には全て間違っていると言う事になります。



なんだか訳わかんなくなっちゃった。 ところで光の速さが不変だとして、運動はすべ て相対的であるとして、いったい何が起こるんですか?

そうですね。話がちょっと横道にそれてしまったけど、これらの事から、運動だけでなく物の大 きさ、質量、時間も絶対的なものではないと言う、今までの常識を覆すような理論が生まれて来 るんです。

わかりやすく言うと、今ここで5秒経ったとしても、ある所から見たら3秒であったりするし今こ こで長さ10cmの鉛筆があったとしても、ある所から見ると7cmであったりするって事なんです。



ええっ! ある所から見たらって、何処から?

ちょっと分かりにくいかもしれないけど、「ここ」と異なる一定の速度で移動している所です。 例えば、「ここ」は時速40Km/hである方向に移動している電車の中だとします。「ある所」とい うのは、「ここ」と異なる時速で移動している自動車の中(例えば時速80Km/h)を指します。 物理学的に表現すると、「異なる慣性系」と言う事になります。

異なる「慣性系」(一定速度で移動している物体)の間では物の大きさ、質量、時間はすべて相 対的な物でしかないのです。



まさかぁ!...じゃ、例えば飛行機の中では地上と時間の経つ早さが違うって事?

その通りなんです!  どう言う事かご説明しましょう。

これはあくまでも仮定の話しですが、地上に15万Kmの高さの建物を建てます。 天井に鏡を張りま す。天井に向かって光を発します。床には1秒後に光が戻って来ますよね?(往復で30万Km=光の秒 速)

では、飛行機の中も同じ事をやります。 天井に鏡を張って床から天井に向けて光を発し、何秒後 に床まで光が戻って来るか測るのです。 あくまでも仮定の話しですが、飛行機の天井までの高さ も15万Km(!)あるとします。 答えですが、当然、地上と同じ1秒後です。 な〜んだ同じじゃないか!って言わないで下さい。

問題はその飛行機の様子を地上から見たときなんです。 あくまでも見えたとしての話しですが。 結論から言うと、地上で1秒経っても、飛行機の天井から反射された光はまだ飛行機の床には到達 していないのです!



地上の建物での実験や、飛行機の中での実験は、少なくともその中にいる人にとって光はまっすぐ 上に上がり、反射されたまっすぐ下に戻ってくる垂直往復運動ですよね。 ところが、地上から見 ていると飛行機の床から光が発射された瞬間と、光が天井から反射されて下に戻ってくる瞬間では 飛行機の位置は水平に移動していますよね? 気がつきましたか? そうです、地上から見ている と飛行機の上では光が飛ばなければいけない距離が明らかに長いのです。

光の速さは一定ですから、距離が長いと時間がかかります。 地上では1秒で往復し、機上でも1秒 で往復するのですが、地上から(地上は速度がゼロですね)移動速度の異なる飛行機の世界の出来 事を覗いて見ると、速度の速い機上ではあきらかに時間は遅く進んでいるのです。

絶対的な時間など存在しないのです! 飛行機の速度が光の速さに近づく程、この時間の差は顕著 に現れますが、日常生活レベルでは(このジャンボ旅客機の例では10億分の1秒程度の差)全く問 題にならない程度の差しかないだけなのです。



なぁ〜るほど! 本当にそう言う事になりますね! すごい! 一定速度で移動している物の「時間」は移動速度により変化するんですね! じゃぁ、「大きさや質量」が変化するのはどうして?

はい、やっと次に進めますね! 真っ暗闇の中を新幹線が突っ走っているとしましょう。 走っている新幹線の長さを直接物差しを 当てて測る訳には行きませんので、新幹線の先頭が目の前に来た瞬間に新幹線に光を当てる事にし ます。 新幹線の先頭には、最後尾に向けて光を反射する様に鏡を取り付けておきます。 更に、 最後尾には、その光を車外に反射する様に鏡を取り付けておきます。



新幹線の先頭の横に立っている位置から、新幹線の最後尾から反射された光が照らし出した車外の ポイントまでが、新幹線の長さになる訳です。 まず新幹線が停車した状態で実験してみます。 次に新幹線を走らせた状態で測定してみます。 結論から言うと、走らせた状態で測定した方があ きらかに短くなってしまうのです。

新幹線が前に向かって移動している分だけ、後ろに向かって飛んでいる光は、最後尾の鏡に到達し てしまうので、そうなるのです。 もちろん新幹線そのものが音を立てて縮んでしまった訳ではあ りません。 新幹線に乗っている者にとって、新幹線が止まっていようが、走っていようが何ひと つ変わりはないはずです。 物が縮むと言うのは、この場合、「空間その物が縮む」と言うことな のです。



空間その物が縮むってどういう事?

平面で言えば、方眼紙(グラフ用紙)の目盛が変わってしまうようなものです。 我々の生きている 世界は三次元の世界だから、空間にも方眼紙の様に目盛が打ってあるとして(遊園地のジャングル ジムみたいな物ですね)、その目盛自体が不揃いに変化してしまう様なものです。 太陽の強力な 重力の傍を通る際に直進するはずの光は曲げられてしまう、と言う話を最初にしましたが、あれ も同じです。 強力な重力で空間そのものが歪められてしまっただけで、光自身は直進(空間の目 盛に対して)している訳です。



なるほどね。 ところで、もし新幹線が光の速さで走ったらどうなるの?

いい質問ですね! だいぶ感じがつかめて来ましたね! 結論から言うと、新幹線の中を後ろに向かって飛ぶ光と同じ速さで最後部の鏡が最前部の鏡の所ま で来てしまいますから、新幹線の長さはゼロになってしまいます! つまり、逆説的に、形有るも のは光の速さには決して加速できないと言う事なんです。

移動速度が速まるほど(光の速さに近づくほど)物の大きさは縮み、従って体積も小さくなり、質 量は増加する事になる訳ですね。

これで「一定速度で移動している物の大きさや質量や時間は移動速度により変化する」って事、お わかり頂けたと思います。



ふう〜っ! ああ、疲れた!

良く辛抱強く、食い下がってくれましたね! でもこれであなたもアインシュタインの相対性理論 をまがりなりにも語れる様になったんですよ!

もう一度整理してみましょう!


「一般相対性理論」1916年 加速度系についての理論

重力のある場所では光は曲がり (と言う事は空間が歪み)、エネルギーが失われ(と言う事は波 長が長くなり色は赤色に近づく)、時間はゆっくり進む。

      → 重力=加速度により空間は歪み、時間は遅れる


「特殊相対性理論」1905年 慣性系についての理論

一定の速度で移動している物 (慣性運動) の 大きさ、質量、時間 は絶対的なものではなく、 移動速度が 光の速さ に近づくにつれ、それぞれ変化する。(大きさは縮み、質量は増え、時間 は遅れる)

      → 空間も時間も相対的なものである


どうもお疲れ様でした!



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