miyaのベネチアレポート
11:アクアアルタの予感
引っ越しして約1ヶ月が経ちますが、初めてこの部屋を見たときの不安が的中しそうです。それは、アクアアルタ、ベネチア恒例の浸水現象が、家の中までやってきそうなんです。

このアクアアルタという浸水現象、11月から3月にかけて、潮の満ち引きによって起こります。水位が80cm以上になると、まず一番低いサンマルコ広場が浸水し、だいたい最高が120cmくらいで、こうなると、町中がかなり浸水することになります。

原因は、川の上流の気候にもよりますが、主に南風が水を押し上げて、さらに満潮が重なると水位が上がり、低い場所から浸水していく事になります。だいたい、月に2,3日、そのうち満潮になる時だけなので、一日のうち、二回、数時間ほど水が上がります。
年にもよるのですが、年に十数回、毎年の事なので、地元住民は慣れていますが、20年くらい前は、年に1,2度だけだったそうで、ベネチアの地盤沈下が進んでいるのも原因の一つだそうです。

したがって、一階は、通常、店か倉庫で、人は住んでいませんし、住むとしたら一段上げた床になっています。

しかし、今回私が引っ越しした家は一階なんです。
大運河に面した館の一角で、おそらく昔の召使いの住む場所だったんじゃないかと思われる小さなアパートです。
この家の責任者に聞いてみたら、「大丈夫よ。でも、2月3月は、、、うーんちょっと、、、。」と言葉を濁していました。

しかし、5年前の10月上旬に大浸水があった事を私は覚えています。
そのときは突然で、だれもが予測していませんでした。午後から激しい雨と風で、川の上流もひどい雨が降っていたそうです。嵐のような天気が止まず、だんだん水位が上がり、ついにはベネチアほぼ全域が浸水してしまいました。
結局、145cmの最高水位を記録したそうで、一階に住む知り合いの家のコンセントがすべてダメになったという話を聞きました。

そして、今回の家、まずベットの高さにびっくりしました。
かなり古いベットなのですが、マットの位置は私の足の付け根くらいになります。
しかも、なぜかマットはさらに二段重ね。
マットをのせる所は鎖帷子のような金属製網で、こういうつくりは初めてです。
そのベットの後ろにあるコンセント。床から1メートルの位置にあります。こんな不自然な高さにコンセントがあるってことは、、、。

そして、台所も冷蔵庫が台の上に乗っています。
左側にコンセントがあるのですが、その位置も高いです。
これらが意味する事は、"アクアアルタが家の中までやってくる!"

先日、その証拠らしいものを見つけました。
折りたたみ簡易物干し台があるのですが、その脚が4本とも7cmずつきれいに錆びているんです。塩水に浸かったとしか考えられません。
7cmの浸水、これはまた引っ越しを考えないと、、、。
いくら安くて静かないい環境でも、部屋が浸水するとなっては、おちおち寝ていられません。

おまけに27日の月曜日、さっそく館の運河側が浸水していました。
1cmくらいですが、この日は97cmの水位だったそうで、9月にこれでは、今年はこの先さらにひどくなってしまいそうです。
家の前も水たまりになっていたので、このあたりはかなり低い位置になります。

でも、いい天気だったので外に出かけると、ところどころ浸水していました。
橋を渡ろうとした先は、小さな川のようになっていて、どうしようかと思っていたら、横でおばあさんが困っていました。
「水が下がったと思ったのに、ここはダメだねー。」と話しかけられたので、「左側は浅そうですよ。」と答えると、「いやー、足が悪くて、大きく開けられないんだよ。」「手を貸しましょうか?」「私は重いよ。」「大丈夫、私は強いですよ。」と、おばあさんが水たまりを乗り越えるのをちょっと支えました。

こっちでは、お年寄りやベビーカーなどが橋を渡るのを通りがかりの人が手伝います。私も重い買い物をした時など、手伝ってもらったことがあります。今日は、反対に手伝う事ができて、ちょっとうれしくなりました。

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